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執筆者の写真岡﨑 祐仁

総選挙公示期間のXフォロワーの伸び、国民民主がれいわ、参政の倍、自民の5倍余

石破首相は急鈍化の末、選挙戦最終週は連日マイナス、玉木代表は1日6千もの伸びに

選挙期間最後の演説をする国民民主党の玉木雄一郎代表、「玉木コール」が起きた=2024年10月26日午後7時52分、東京駅、岡﨑祐仁撮影
選挙期間最後の演説をする国民民主党の玉木雄一郎代表、「玉木コール」が起きた=2024年10月26日午後7時52分、東京駅、岡﨑祐仁撮影

 衆院総選挙の公示期間中盤の10月20日から翌日にかけての1日で6千余のフォロワーを増やした。国民民主党の玉木雄一郎代表のX(旧ツイッター)アカウントである。これと対照的に、石破茂首相のXフォロワーは、首相就任直後は1日で1,500人ほど増加したが、10月9日の衆院解散のころから伸びを鈍化させ、やがて選挙戦終盤にはマイナスに転落し、フォロワー数が減る日が続いて投票日を迎えた。


 国政政党のXアカウントのフォロワー数を見ると、総選挙投開票までの3週間余の間に、国民民主党が、れいわ新選組と参政党の両党の倍あまり増やし、自民、共産、日本維新の会、立憲民主、公明、社民の各党の伸びを5倍余から30倍近く引き離した。


 上智大学新聞学科「Atta!」取材班では、石破新首相が国会で所信表明演説を行った10月4日から衆院総選挙の投開票があった同月27日にかけて、毎日、主要な国会議員や政党のSNSフォロワーの数を記録した。その結果を分析したところ、国民民主の躍進と自民の凋落の選挙結果にSNSフォロワー数の動向がくっきり投影されていることがわかった。

国政政党の代表、幹事⻑のXフォロワー数の1⽇あたり増減の推移
(グラフ1)国政政党の代表、幹事⻑のXフォロワー数の1⽇あたり増減の推移

国民民主、玉木氏 1日で6,000人以上フォロワー増も

 

 国政政党の代表、幹事長のXフォロワー数の1日ごとの増減をグラフ1にした。調査期間を通じて1万人以上の増加があったのは、国民民主党の玉木雄一郎代表(4万4824人増)、れいわ新選組の山本太郎代表(1万7402人増)、国民民主党の榛葉賀津也幹事長(1万2560人増)、自由民主党の石破茂首相(1万1200人増)だった。


 毎日の伸びを比較すると、衆議院解散の9日までは石破首相が先行したものの、9日に玉木代表と入れ替わり、以降、石破氏は失速した。れいわの山本代表の緊急入院が発表された公示日の15日から3日間は、山本代表が玉木代表をわずかに上回った。

石破茂、野田佳彦、玉木雄一郎諸氏のXフォロワー数の1日あたり増減の推移
(グラフ2)石破茂、野田佳彦、玉木雄一郎諸氏のXフォロワー数の1日あたり増減の推移

 18日には、国民民主の幹事長の榛葉氏が代表の玉木氏を超えてフォロワー数を伸ばした。選挙期間中、榛葉氏は党のYouTubeでライブ配信を複数回行った。21日には、玉木氏が6,226人の増加となり、1日に増えたフォロワー数では調査期間中で最多となった。玉木氏は23日にも4,586人増えた。


 前日22日には、Xで「#国民民主党に騙されるな」とハッシュタグつきのスローガンが広がった。午後10時前にはXの政治のトレンドで上位になった。これに対して同日、玉木氏はXで、榛葉氏はYouTubeライブでそれぞれ切り返す形で発信し、対応する姿勢を示した。


 この間、石破首相のフォロワー数の伸びは低減していき、19日のフォロワー増は100を切った。同日には立憲民主の野田代表を初めて下回った。野田代表のXアカウントは党や他の候補の投稿のリポストばかりで、数日に一度しか自分独自の投稿をしないためなのか、選挙期間中のフォロワー数の伸びは794にとどまった。


 23日には、しんぶん赤旗が「裏金非公認に2000万円 公認と同額 自民本部が政党助成金」と報じた。翌日24日、石破首相のXフォロワー数は減少に転じ、27日まで減少が続いた。


 27日の投開票日の昼までの1日のXフォロワーの増加数を比較すると、国民民主党の玉木氏、榛葉氏、れいわ新選組の山本氏、参政党の神谷宗幣代表の順だった。石破首相のフォロワーは減少し、そのマイナス幅は108だった。

 

国民民主、参政、れいわが伸長、Xフォロワー

国政政党のXフォロワー数の1日あたり増減の推移
(グラフ3)国政政党のXフォロワー数の1日あたり増減の推移

 国政政党のX公式アカウントのフォロワー数の1日ごとの増減をグラフ3にした。10月15日の公示日時点で国政政党の要件を満たしていた9党はいずれも公式アカウントを運用していた。


 フォロワー数が大きく増えた日にはグラフが山となり、各党の山が重なる日が3つある。


 1つ目は、衆議院が解散した9日の前後だ。9日には党首討論が行われた。各党が公約を発表した時期とも重なる。国民民主党は公約を発表した8日から9日にかけて、党首討論が開かれた9日から10日にかけてフォロワー数が伸びている。国民民主の玉木雄一郎代表は8日、YouTubeチャンネル「ReHacQ(リハック−)」のライブ番組で前安芸高田市長の石丸伸二氏と対談した。同時接続数は4万人を超えた。


 2つ目は、公示日の15日だ。この日のフォロワー数の増加は、れいわ新選組、国民民主、参政党の順だった。同日午前3時50分には、れいわの公式Xで山本太郎代表の緊急入院が発表され、1,249人増加した。


 3つ目は、21日だ。前日20日は選挙期間中の最後の日曜日であり、いずれの党もフォロワー数が増えた。最もフォロワー数が伸びたのは国民民主で1,712人増、次は参政党で439人増、3番目はれいわで355人増えた。


 4日から27日までの23日間の増加を見ると、国民民主党(1万2,858人)、参政党(6,286人)、れいわ新選組(6,210人)、自由民主党(2,319人)、日本共産党(2,166人)、日本維新の会(1,952人)、立憲民主党(1,577人)、公明党(1,145人)、社会民主党(436人)の順だった。


YouTubeでも玉木氏が存在感

「玉木コール」に応える国民民主党の玉木雄一郎代表=2024年10月26日午後7時52分、東京駅、岡﨑祐仁撮影
「玉木コール」に応える国民民主党の玉木雄一郎代表=2024年10月26日午後7時52分、東京駅、岡﨑祐仁撮影

 YouTube登録者数は27日時点で、れいわ新選組が32万人、参政党が24万5千人、公明党が19万3千人だった。調査期間中に国民民主党が4万8千人、参政党が1万1千人、公明党が1万人ずつ増えた。


 国民民主党は27日の午後11時ごろ、YouTubeのチャンネル登録者数が10万人を超えた。玉木氏個人のYouTubeは27日時点で26万4千人の登録者がいた。

 

 Facebookでは、自由民主党が11万人、立憲民主党が6.2万人、公明党とれいわ新選組が4.1万人だった。調査期間中には公明党が1,000人、国民民主党が320人ずつ増えた。Facebookの仕様上、他党のフォロワー数の増減を確認することはできなかった。

応援演説を行う石破首相(左)=2024年10月26日午後5時13分、礫川公園、岡﨑祐仁撮影
応援演説を行う石破首相(左)=2024年10月26日午後5時13分、礫川公園、岡﨑祐仁撮影

 Instagramでは、公明党が5.2万人、自由民主党が5万人、参政党が3.8万人だった。調査期間中には参政党が3,000人、国民民主党が2,171人、公明党とれいわ新選組が2,000人ずつ増えた。


 TikTokでは、れいわ新選組が11.9万人、公明党が2万人、参政党が1.3万人だった。調査期間中にはれいわ新選組が1万人、参政党が3,806人、立憲民主党が1,209人ずつ増えた。


 国民民主党のTikTokアカウントは確認できなかった。同党のウェブサイトに掲載されているSNS公式アカウントの一覧にTikTokは見当たらない。日経新聞の報道によると、国民民主党は昨年から、議員や秘書に対して、業務用端末での利用を禁止しており、そのためだとみられる。


 公式LINEでは、自由民主党が65万8577人、公明党が32万3171人、国民民主党が8万4218人だった。公明党は15日に648人の伸びを記録した。調査期間中には公明党が3,782人、国民民主党が855人、日本共産党が850人ずつ増えた。


若年層の支持 国民民主に、年代別の出口調査


 読売新聞と日本テレビ系列の出口調査朝日新聞の出口調査を参照する。両社の出口調査によると、比例区の投票先は、20代は国民民主党が25%を超えて最も選ばれた。30代の投票先は、読売新聞の調査では、国民民主党、自由民主党、立憲民主党の順だった。朝日新聞の調査では、国民民主党と自民党が並び、次いで立憲民主党となった。


 いずれの調査でも18歳、19歳の投票先は、自民党、国民民主党、立憲民主党の順番だった。


 40代以上では、自民党、立憲民主党が増え、国民民主党が減った。同様の傾向がれいわ新選組、参政党にも見られるが、国民民主党に比べて緩やかな減少だった。


 総務省の統計によると、若年層の方がネット利用時間が長い[1]。平日では20代が最長で、10代、30、40代と続く。休日では10代、20代、30代、40代となっている。今回の選挙では、SNSへの接触時間が長い世代ほど国民民主党へ投票した。

 

広がるSNS利用


 日本のソーシャルメディア利用者数は増加すると予測され、若者中心のコミュニケーション手段からあらゆる年代におけるコミュニケーション手段へと変化している[2]。政治家もほかではない。ネットコミュニケーション研究所が2022年に行った調査によると、国会議員のSNSアカウント所有率は年々高まっている。もっともアカウントが所有されているSNSはFacebookであり、100%に近い議員が所有していた[3]


 2013年の公職選挙法改正により、ホームページ、ブログ、SNS(ツイッター、フェイスブック等)、動画共有サービス(YouTube、ニコニコ動画等)、動画中継サイト(Ustream、ニコニコ動画の生放送等)等を選挙運動にも利用できる[4]

 

調査の方法と生データ


 「Atta!」取材班は、現職の国会議員、衆院総選挙の候補者、首長経験者、国政政党のSNSから延べ369アカウントを対象として、1日に一度、フォロワー数を記録することにした。正午から順次アカウントにアクセスし、フォロワー数、登録者数をスクリーンショットし、その数値をExcelファイルにまとめた。Facebookのフォロワー数が表示されないアカウントについては、「友達」の数で代替した。期間は、石破茂首相が所信表明演説を行った10月4日から投開票日の27日まで。4日以降に、対象に加えたアカウントもある。


 主なデータをエクセルファイルにまとめ、以下のリンク先に公開することにした。



[1] 総務省 令和5年度情報通信メディアの利用時間と情報行動に関する調査報告書 第1章1-1 [平日]主なメディアの平均利用時間(全年代・年代別)、[休日]主なメディアの平均利用時間(全年代・年代別)https://www.soumu.go.jp/main_content/000953019.pdf.

[2] 総務省 令和6年度版情報通信白書 第II部 情報通信分野の現状と課題 第7節ICTサービス及びコンテンツ・アプリケーションサービス市場の動向 1 SNS https://www.soumu.go.jp/johotsusintokei/whitepaper/ja/r06/html/nd217100.html.

[3] ネットコミュニケーション研究所 【2022年版】国会議員SNSメディア利用調査結果―政治家のSNS利用は2017年→2022年でどう変化した?― https://netcommu.jp/Report/politicsmedia2022#index_psvhTJZG.

[4] 総務省 (1)インターネット等を利用する方法による選挙運動の解禁等 https://www.soumu.go.jp/senkyo/senkyo_s/naruhodo/naruhodo10_2.html. 

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