1日で2万9000の伸びも記録
兵庫県知事選挙公示期間中の斎藤元彦氏のX(旧ツイッター)アカウントは、連日3千以上の増加ペースでフォロワーを拡大した。同選挙に立候補した元尼崎市長・稲村和美氏の10倍、前参院議員・清水貴之氏の80倍の増加で、特に投開票をはさむ17日から18日にかけて、斎藤氏のXアカウントは1日で2万9147人ものフォロワーを増やした。先の衆議院選挙で政党の党首としてXフォロワー数を最も増やした国民民主党の玉木雄一郎代表は、10月27日の投開票で国政のキャスティング・ボートを握った後、10月30日から31日にかけて2万5436人ものフォロワーを増やし、これが最多だったが、それをも上回った。
フォロワー数増加は斎藤氏、立花氏が他候補を引きはなす
上智大学新聞学科「Atta!」取材班では、10月31日公示、11月17日投開票の兵庫県知事選挙について、連日、7人の候補者のSNSフォロワーの数を記録した。斎藤氏は10月11日から、稲村氏、清水氏、大澤氏は12日から、立花氏は25日から、福本氏、木島氏は31日からの記録になる。
7候補のXフォロワー数の1日ごとの増減をグラフ1にした。10月31日の公示日から11月17日の投開票日までの増加を見ると、前知事・斎藤元彦氏が5万3595人増、「NHKから国民を守る党」党首の立花孝志氏が4万1763人増、元尼崎市長の稲村和美氏が5,458人増、以下、木島洋嗣氏5,014人増、大澤芳清氏929人増、清水貴之氏655人増、福本繁幸氏399人増の順だった。11月17日時点で、立花氏のXのフォロワー数は30万4724人、斎藤氏は18万6719人だった。
斎藤氏は公示期間中、連日3千以上のフォロワーを増やし、終盤の16日から17日にかけては8,358人を増やした。立花氏は序盤の11月1日から2日にかけての6,805人の増加が最大だった。11月1日の午後9時からは、候補者によるネット討論会が行われており[1]、それへの出演が影響しているとみられる。立花氏のXは公示期間中、平均して毎日2,400人以上ずつ増加した。同氏のYouTubeアカウントはチャンネル登録者数を5万4千人増やした。公示期間中に56本の動画を投稿し、うち50本が兵庫県知事選に関連するものだった。
木島氏は2日、清水氏に対する質問動画を投稿した。同氏から得た回答にも言及し、拡散された。2日から3日にかけては、最多の1,641人を増やした。
グラフ1を参照すると、斎藤氏は10月27日を境にフォロワー数の伸びが加速している。27日午後7時からは日本青年会議所兵庫ブロック協議会主催の討論会が開かれ、立候補を予定する8名が参加した。木島氏は不参加だった。
討論会の冒頭で立花氏は、「斎藤前知事が、テレビとかメディアにいじめられているという噂があっちこっちでありまして。真っ当な改革をしようとする人の真実を伝えに東京からやってまいりました」と発言した。続けて、「私のYouTubeや私以外の方でも、斎藤前知事にとってプラスの情報とマイナスの情報が出ています。テレビはマイナスの情報しか出ていませんので、ぜひネットをご覧いただいて、皆さんの貴重な一票を誰に託すのかお決めいただければと思います」と呼びかけた[2]。立花氏が斎藤氏の支持を表明したことが、27日以降に斎藤氏のXフォロワー数が増加した契機の一つだった、といえそうだ。
斎藤氏の各種SNS、公示期間中フォロワー数はインスタ2.4倍、YouTube3.6倍
公示期間中の斎藤氏の各種SNSフォロワー数の推移を確認する。Instagramは50回の投稿があり、1.7万人増で2.4倍となった。Facebookは330人の増加で、1.1倍と微増だった。同アカウントは、斎藤氏が初当選した2021年7月18日以降、更新がなかった。
YouTubeは2つのアカウントがあり、「さいとう元彦ちゃんねる」、「【公式】届け、さいとう元彦の声」だ。前者は、2021年7月17日から更新がなかったものの4,390人増加し、2.3倍となった。後者は、10月11日に新設し、2万3800人の増加で、3.6倍だった。12日に初めて投稿した動画で斎藤氏は、「どういう想いを持っているのかについて県民の皆さんにしっかり伝えさせていただくために、YouTubeを新たに始めさせていただくことにしました」と語った[3]。公示期間中に動画は投稿されなかった。
稲村氏は低迷、アカウント凍結も影響か
公示期間中の稲村氏の各種SNSフォロワー数の推移を確認する。Instagramは892人増、Facebookは325人増、YouTubeは1,310人増、TikTokは272人増だった。投稿回数ではInstagram(66回)、Facebook(50回)、YouTube(12回)と、斎藤氏を上回ったが、フォロワーの増加数では同氏に及ばなかった。
稲村陣営では後援会が運営するXアカウントが2度凍結された。稲村氏のHPによると、11月6日と11月12日の午後9時過ぎに「【公式】稲村和美応援「ともにひょうご」」が凍結された[4]。後援会の代表は、「当方にXルールに反する行為はなく、大量の一斉通報が行われたことによるものであると推測されています」とした[5]。
稲村氏個人のアカウントへのマイナスな影響は見られなかった。後援会アカウントが2回目に凍結された11月12日から13日にかけては、稲村氏のXフォロワーが619人増加し、公示期間中で最大となった。稲村氏が斎藤氏を上回る日はなかった。
10代、20代の6割が斎藤氏に投票 年代別の出口調査
投開票日の17日にNHK、読売新聞、朝日新聞の各社が行った出口調査を参照する。NHKの調査によると、年代別の投票先では、10代から50代までは斎藤氏が最も多かった。60代以上では、稲村氏が斎藤氏を上回った。朝日新聞の調査でも同様の結果となった。
投票の際に参考にしたことについてNHKの調査では、「SNSや動画サイト」、「新聞」と「テレビ」、「知人・家族のすすめ」の順だった。「SNSや動画サイト」と答えた人の7割以上が斎藤氏に投票したと答えた。読売新聞の調査では、「SNSや動画投稿サイト」をあげた人の9割弱が斎藤氏を支持した。
総務省の統計によると、若年層ほどネット利用時間が長く、平日の20代の利用時間は60代の2倍以上である[6]。今回の選挙ではSNSへの接触時間が長い世代ほど斎藤氏へ投票した、といえそうだ。
今年7月に行われた東京都知事選挙、10月27日投開票の衆議院選挙でも同様の傾向が見られた。都知事選では、広島県安芸高田市の元市長の石丸伸二氏が10代、20代の4割あまりの支持を得て、現職の小池百合子氏の2割を上回った[7]。衆院選比例区の20代の投票先では、国民民主党が最も選ばれた[8]。
調査の方法
「Atta!」取材班は、候補者、立候補予定者のSNSのアカウントのうち延べ25アカウントを対象として、1日に一度、フォロワー数を記録することにした。正午から順次アカウントにアクセスし、フォロワー数、登録者数をスクリーンショットし、その数値をExcelファイルにまとめた。フォロワー数の増加を倍率で表記する際には、小数点以下第2位を四捨五入した。期間は、10月11日から11月27日まで。11日以降に、対象に加えたアカウントもある。
[1] ReHacQ YouTubeチャンネル 【ReHacQ討論会】兵庫県知事選挙【候補者7人vs高橋弘樹】 https://www.youtube.com/live/b-bNBgMhpNM?si=FxDM7iSehN8RbZ-9.
[2] ニコニコ生放送 兵庫県知事選挙 公開討論会 生中継(主催:日本青年会議所兵庫ブロック協議会)https://live.nicovideo.jp/watch/lv346126911?t=7m21s.
[3] 【公式】届け、さいとう元彦の声 届け、さいとう元彦の声!YouTubeを始めました! https://www.youtube.com/watch?v=YjGsZEdQT_U.
[4] 稲村和美HP
「ともにひょうご」公式X(旧Twitter)凍結への対応について https://www.tomonihyogo.jp/info/419/.
SNSを利用した不正行為についてhttps://www.tomonihyogo.jp/info/745/.
[5] 稲村和美HP SNSを利用した不正行為についてhttps://www.tomonihyogo.jp/info/745/.
[6] 総務省 令和5年度情報通信メディアの利用時間と情報行動に関する調査報告書 第1章1-1 [平日]主なメディアの平均利用時間(全年代・年代別)、[休日]主なメディアの平均利用時間(全年代・年代別)https://www.soumu.go.jp/main_content/000953019.pdf.
[7] NHK 東京都知事選挙 NHK出口調査結果https://www3.nhk.or.jp/shutoken-news/20240707/1000106259.html.
[8] 朝日新聞 若年層の支持、国民とれいわが拡大 自民は激減 朝日出口調https://digital.asahi.com/articles/ASSBX357QSBXUZPS001M.html.